家族と思い出
旅のヒントは、アルゴリズムではなく家族から
今、旅行を計画するとき、まず家族に聞く人はあまりいません。聞く相手はフィードです。そこには、映える写真が撮れる展望スポットや、街でいちばんおいしいと言われるサンドイッチが並んでいます。この記事では、自分の家系図に目を向けるほうが価値があるかもしれない理由と、その価値が世代を重ねるごとに大きくなっていく理由を考えます。
みんなが同じおすすめを受け取るとき
SNSは、私たちが場所を見つける方法を変えました。多くのフィードに現れる場所には、多くの人が集まります。それも同じ時期に、同じ構図の写真を求めて、ということが少なくありません。実際に着いてみると、撮影スポットの前には行列ができ、値段は人出に合わせて上がっていて、何かを発見するというより、チェックリストを消化しているような体験になりがちです。
だからといって、こうしたおすすめが悪いわけではありません。心から気に入って場所をすすめている人もたくさんいます。けれども、おすすめを広めるプラットフォームが評価するのは、主に目を引くものです。場所が一気に広まるのに、よい場所である必要はありません。多くの場合、見栄えがよければ十分なのです。ときには、おすすめの裏にタイアップや招待、あるいは多くの人に見てもらいたいという無理もない願いがあることもあります。それは外からはほとんど見分けがつきません。
いちばん正直なおすすめには、拡散力がない
場所をすすめても、何の得もしない人たちがいます。それは家族です。おばが何年も前から話している小さな宿をあなたが訪れても、おばに紹介料が入ることはありません。若いころにキャンプをした浜辺のことを祖父が話してくれても、祖父のフォロワーが増えるわけではありません。
こうしたおすすめは客観的ではありません。思い出や、当時一緒に旅した人たち、ときには懐かしさによって色づいています。けれども、だからこそ価値があるのです。それは何がどこにあるかだけでなく、なぜそれがその人にとって意味のあるものだったのかを教えてくれます。そして、好みをよく知っていて、どんなつもりで言っているのかを推し量れる人から届くのです。
かつてないほど多くの旅
さらに、見落とされがちな変化があります。国連の観光機関(UN Tourism、旧UNWTO)によると、1950年の世界の国際観光客到着数は約2,500万回でした。1980年には2億7,800万回、2000年にはすでに6億7,400万回に達しています。2025年については、UN Tourismは約15億2,000万回と推計しています。1950年のおよそ60倍です。
この数字が数えているのは人数ではなく、旅行の回数です。海外へ2回旅した人は、2回数えられます。また、同じ期間に世界の人口も増えています。それでも傾向ははっきりしていて、今も右肩上がりが続いています。
この数字を家系図と並べてみると、興味深い姿が見えてきます。今の30代・40代の祖父母の多くは、海外旅行が特別なことだった時代に育ちました。その子どもたちはずっと多く旅をするようになり、孫の世代はさらに多く旅をしていることも少なくありません。多くの家族で、今の世代がこれまでのどの世代よりも多くの世界を見てきた、ということは十分にありえます。そして、どこへ行くにしても、家族の誰かがすでにそこを訪れている可能性が今ほど高い時代は、そうありません。
問題は、その知識が散らばっていること
とはいえ、誰も記録しなければ、その知識はあまり役に立ちません。それはアルバムやスライドフィルムの箱、古いスマートフォンの中、そして家族の集まりで語られてはまた忘れられていく話の中に眠っています。祖父母が海辺へ出かけた旅のことも、「あそこには一度行ったことがあるよ」というぼんやりした話としてしか知らない人は多いでしょう。正確にはどこだったのか、何年のことか、そこで何が見られたのか――そうした記憶は薄れていきます。
そのうえ、そもそも聞かないことも少なくありません。旅の前には、おばに電話するより、アプリを開くほうが手軽です。それに、自分の家族の誰かがまさにその場所へ行ったことがあると、単に知らない人も多いのです。
場所をめぐる家族の記憶
そこで役立つのがPerrenixです。アプリでは人生についての質問に答え、回答には写真と場所を添えて保存できます。「祖先」セクションでは、家族の歴史を記録し、古い写真や文書をアップロードして、そのエントリーにも場所を加えられます。家系図は、ひとりで作ることも、招待した家族と一緒に作ることもできます。
共有の家系図では、それがひとつの一覧になります。「家族の場所」です。希望すれば、場所を年と一緒に、さらにお好みで写真も添えて、家族と共有できます。こうして、家族がこれまでどこへ行ったのか、誰がいつそこにいたのかを、みんなが見られるようになります。旅の前に都市や国を検索すれば、家系図の中の誰かがすでにそこへ行ったことがあるかどうかが、ひと目でわかります。一覧は「いいね」の数ではなく、家族がその場所を訪れた回数の順に並びます。
共有されないのは、あなたが書いた文章です。文章は、信頼の輪に開示されるまで非公開のままです。信頼の輪とは、あなた自身が選んだ、いつかあなたの思い出にアクセスできるようにしたい人たちのことです。回答をほかのPerrenixユーザーにも見られるようにするかどうかも、あなたが決められます。まったく公開しないか、あとで公開するか、すぐに公開するかです。
これは意図的な設計です。場所はきっかけであり、その裏にある物語こそ、会話にする価値があります。これから訪れる街に、母親が30年前に行っていたとわかれば、電話をかけるいい理由になります。今も営業しているカフェを教えてもらえるかもしれません。一度も聞いたことのない話が聞けるかもしれません。
信頼できる人だけでつくるネットワーク
ある意味では、これもひとつのソーシャルネットワークです。ただし、拡散力もフォロワーもなく、見てもらうために場所が映えなければならないというプレッシャーもありません。コミュニティはあなたの家系図です。好みをよく知っていて、あなたに何かを売りつけようとはしない人たちです。
そして、その価値は次の旅だけにとどまりません。共有されたひとつひとつの場所が、家族の歴史の小さなかけらです。20年後にこの一覧をスクロールする人が目にするのは、旅先だけではなく、人生のいくつもの章です。学校を卒業して初めての大きな旅、祖父母の新婚旅行、子どもたちがまだ小さかった夏。そのときあなたが向かうのは、今みんなが投稿している場所ではなく、祖母がかつて幸せだった場所かもしれません。
さらに考えるための3つの問い
- 家族にすすめたい場所はどこですか――そして、なぜその場所なのでしょうか?
- 祖父母が今のあなたと同じ年ごろに、どこを旅していたか知っていますか?
- 家族からのおすすめで、一度も試したことがないものは何ですか?
出典
- UN Tourism(当時はUNWTO):「UNWTO Tourism Highlights, 2017 Edition」(2017年)――1950年、1980年、2000年の国際観光客到着数
- UN Tourism:「World Tourism Barometer」2026年1月号――2025年の推計値(国際観光客到着数15億2,000万回)