『易経』:最古の問いの書
世界で最も古い書物のひとつでありながら、問いを投げかけることで使う本があります。「変化の書」とも呼ばれる『易経』は、自分を振り返るための最古の道具なのかもしれません。哲学シリーズ第7回です。
変化を映す64の図
『易経』の起源は、およそ3,000年前、中国の周の時代にさかのぼります。その核となるのは64の卦(け)です。卦とは、6本の線を積み重ねた記号のことで、それぞれの線はつながっているか、途中で切れているかのどちらかです。一つひとつの卦が、ある状況と、そこから起こりうる変化を表しています。のちに注釈が加えられ、伝統的にそれは孔子の手によるものとされています。
問いを立てる
『易経』に尋ねる人は、まず問いを言葉にします。次に、硬貨を投げたり、ノコギリソウの茎を分けたりして卦を導き出し、それに対応する文章を読みます。今日では多くの人が、これを占いというより鏡として使っています。その文章をきっかけに、自分の置かれた状況を新しい角度から見つめ直すのです。
肝心なことは、その前に起きています。よい問いを立てるには、自分が本当は何に心をとらわれているのかを、はっきりさせなければならないからです。
変化と、変わらずに残るもの
古くからの解釈によれば、題名にある「易」という字には三つの意味があります。易しいこと(簡易)、変わること(変易)、そして変わらないこと(不易)です。ここに、この書の根本にある考え方が込められています。すべては変わっていく。けれども、変化はパターンに従っている。変わらずに残るのは、止まっているものではなく、ものごとが変わっていくその形なのです。
西洋への旅
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツは、卦が2進数として読めることに魅了されました。0と1から成るこの仕組みの上で、今日のあらゆるコンピューターが動いています。1924年に出たリヒャルト・ヴィルヘルムのドイツ語訳によって、この書は西洋で知られるようになりました。英語版には、C・G・ユングが序文を寄せています。
論理的な帰結
『易経』が教えてくれるのは、振り返りは問いから始まるということです。よい問いは、自分ですでに知っているのに、一度も言葉にしたことのないものを開いてくれます。
そして、変わらずに残るものがどこにあるのかも教えてくれます。それは一つひとつの瞬間にではなく、長い時間をかけて現れるパターンのなかにあります。同じ大きな問いに何年にもわたって繰り返し答えていけば、いつか自分自身のパターンが見えてきます。あらゆる変化を通して保たれてきたもの。それこそが、一人の人間から残るものなのです。
さらに考えるための3つの問い
- 今、いちばん心を占めている問いは何ですか?
- あなたの人生で変わったものは何でしょうか? そして、変わらなかったものは?
- この10年を振り返ったとき、どんなパターンが見えますか?